2月・3月:ブロンテ姉妹

2月・3月:ブロンテ姉妹

《祖父母と両親》ブロンテ姉妹は父方も母方もケルト系で、彼女らの語りの根底にあるケルト的な香りはここからくるものだ。祖父は無学ではあったが優れた語り部で、父親は機を織りながら本を読むほどの文学青年だった。

《子ども時代 1》シャーロット・ブロンテ(Charlotte Brontë)は1816年、エミリー(Emily Jane)は18年、アン(Anne)は20年にソーントンの牧師の子に生まれた。一家は母親の死後ハワースの牧師館に移り住み、三人は生涯のほとんどをここで過ごすことになる。

《子ども時代 2》1824年、シャーロットとエミリーは上の姉ふたりとともにカウアン・ブリッジという学校に入ったんだが、学校の衛生状態が悪く姉たちが死んだため、8ヶ月でふたりは家に戻り、シャーロットは姉妹の事実上の長女となった。

《子ども時代 3》三姉妹と弟のブランウェルは家で様々な空想にふけった。父親に買い与えられたおもちゃの兵隊をもとに'Glass Town'、Gondal国の物語、そして'Angria'といった小説がきょうだいの合作で書かれた。

《ロウ・ヘッド・スクール》シャーロットは1831年、再びロウ・ヘッド・スクールという学校に送られ、35年に同校の教師として着任した。エミリーも同年同じ学校に入ったんだが、ホームシックで退学している。

《文学的野心と実際的問題》ブロンテ姉妹は文学的野心のため、ワーズワースやコールリッジに手紙を書き、どこかへ推薦してもらおうとしていた。シャーロットは生活費をどう稼ぐかに頭を悩ませていたが、校長との軋轢から学校を辞し、アンも退学している。

《『嵐が丘』のルーツ》エミリーはハリファックスのミス・パチェット・スクールに音楽教師として赴任した。この近くに、『嵐が丘』のモデルと言われるハイ・サンダー・ランド・ホールとシブデン・ホールがある。この学校を建てたジャック・シャープは、ヒースクリフのモデルと言われてるんだ。

《家庭教師として》1839年、シャーロットとアンは家庭教師として働き始めるが、彼女らの扱いは女中同然で、夜には縫い物も強要された。まぁ、この時代の家庭教師の扱いはそんなものなんだが…。けど彼女たちはそれぞれの生活から、『ジェイン・エア』や『アグネス・グレイ』の構想を得るんだぜ。

《ブリュッセルにて》1842年、シャーロットとエミリーは、学校開設に箔をつけるため、フランス語習得を目的としてブリュッセルに赴いた。ふたりは素晴らしいエッセイを残し、文学的才能を開花させつつあった。エミリーはよく背の低いシャーロットにもたれかかってたな…。

《帰国と再渡航》留学資金を出してくれていた伯母の死去により、姉妹はベルギーから帰国することになる。この年、家庭教師をしていたアンが想いを寄せていた牧師も亡くなっているな。シャーロットはまだ学校を開く自信がなく、ひとりでブリュッセルへ戻ることになる。

《シャーロットの恋》ブリュッセルでシャーロットは、コンスタンス・エジェという妻子ある男性に恋をした。エジェは文学を通してシャーロットと通じ合える素晴らしい男性だった。しかしその想いは遂げられず、シャーロットは苦しみぬいて精神的に破たんし、とうとうブリュッセルを発つ決意をする。

《シャーロットの手紙 その1》1844年、シャーロットは帰国したが、エジェへの思慕は高まる一方で、少なくとも七通の手紙を書いた。エジェはそれを破り捨てたが、エジェ夫人がそのうち四通を拾い、糸でとじ合わせて子どもに残した。この手紙は今、俺の居る大英図書館に保管されてるぜ。

《シャーロットの手紙 その2》エジェへのシャーロットの手紙。「先生はわたしにわずかな関心を示してくださいました。それでわたしは取りすがるような思いでそのわずかな関心を保っていければいいと思っているのです。わたしはいのちに取りすがっているように、それに取りすがっているのです。」

《文学界への扉 その1》1845年、シャーロットは三姉妹で詩集を出すことを計画し、翌年5月に自費出版で『カラー・、エリス、アクトン・ベル詩集』が出版されるが、二冊しか売れなかった。しかしシャーロットはめげず、小説を競作して売り出そうとする。

《文学界への扉 その2》シャーロットは『教授』、エミリーは『嵐が丘』、アンは『アグネス・グレイ』を書き、出版社を渡り歩くが、シャーロットの作品だけ引き受け手が見つからなかった。しかしある出版社が、三巻本があれば見てあげようと助言する。これが『ジェイン・エア』の始まりだ。

《文学界への扉 その3》『ジェイン・エア』はすぐに出版が決まり、瞬く間にベストセラーとなる。この謎の作者「カラー・ベル」が誰なのか、皆が知りたがった。『嵐が丘』と『アグネス・グレイ』を抱えていた出版社ニュービー社は、「カラー・ベル」の作品としてこの二作品を出版した。

《「ベル」騒動 その1》ウィリアム・メイクピース・サッカレーは、唯一『ジェイン・エア』の作者を女性として賛辞を送った。尊敬していた作家に評価されたシャーロットは有頂天になり、第二版にサッカレーへの献辞を刷り込んだ。これが大変なスキャンダルに発展するんだけどな…。

《「ベル」騒動 その2》当時サッカレーの環境は、『ジェイン・エア』に描かれた家庭環境とそっくりだった。ここから、サッカレー家の家庭教師が「カラー・ベル」じゃないかという噂が立つ。けど、この騒動も出版社のゴタゴタから自然消滅するんだけどな。

《「ベル」騒動 その3》『嵐が丘』と『アグネス・グレイ』を出版していたニュービー社と、『ジェイン・エア』を出版したスミス・アンド・エルダー社は、「ベル」がひとりの人物だとして出版権を争っていた。そこでシャーロットとアンは急遽ロンドンに行き、自分たちが三姉妹であることを説明する。

《きょうだいの死》1849年、ブロンテ家は相次ぐ不幸に見舞われた。まず男きょうだいのブランウェルが家庭教師先の夫人との不倫の末、身を持ち崩して阿片とアルコールに溺れ死亡する。その4日後の葬儀でエミリーが風邪をひき、12月19日に死亡、アンも肺病が悪化して翌年5月28日にスカーバラで亡くなる。

《ギャスケルとの出会い》シャーロットは度重なる不幸にもめげず、『シャーリー』を執筆する。彼女の強さには感心するばかりだよ。この時、シャーロットはエリザベス・ギャスケルと知り合い、意気投合する。彼女が語った身の上話をもとに、ギャスケルは後に『シャーロット・ブロンテの生涯』を書く。

《シャーロットの結婚》1852年、副牧師のアーサー・ベル・ニコルズがシャーロットに求婚する。父親は天才作家である娘が副牧師と結婚するのに反対したが、ニコルズはあきらめず、次第にシャーロットの気持ちもニコルズに傾いていく。54年、二人は結婚するが、父親は式に参列しなかった。

《シャーロットの死》結婚した二人は一か月の新婚旅行に出かけるが、風邪をひいたのが原因で、シャーロットは死亡する。38歳で、妊娠中だった。あの三姉妹は、みんな二十代から三十代の若さで亡くなったんだよな…。

ジュール・ヴェルヌ イベント

ζリ*´点`)<Bonjour~アーサー!ご機嫌いかがかな? [言]ω[言];<お前が来た時点で最悪だよ! ζリ*´点`)<まぁそう言わずに。今日が誰の誕生日か分かるかい? [言]ω[言]<…さあ? ζリ*´点`)<ジュール・ヴェルヌだよ!俺が誇るSFの祖さ!

[言]ω[言]<…で? ζリ*´点`)<いやぁ、お前が図書館にこもって作家の紹介をしてるんだからさ、俺もちょっとやっていいと思わない?お前だって読んだことあるだろ? [言]ω[言]<まぁ、有名どころはな。 ζリ*´点`)<じゃ、始めるよー! [言]ω[言];<え、ちょっ、

ζリ*´点`)<という訳で、今日は特別編、19世紀フランスの作家、ジュール・ヴェルヌについてちょっとお話しようかな? [言]ω[言];<しょうがねぇなぁ…

ζリ*´点`)<あ、邪魔だなって思う人は、ミュートにしたり、一時的にブロックしてくれて構わないからね。 [言]ω[言];<それ俺のセリフ…

ζリ*´点`)<ヴェルヌといえば『八十日間世界一周』なんかがあるけど、一番有名なのは『海底二万マイル』じゃないかな?ディ○ニーによって映画化されたこともあるし、そのテーマパークにはネモ船長が築いた秘密基地もあるよね。

ζリ*´点`)<ヴェルヌは1828年の今日、港町のナントで生まれたんだ。あそこは貿易が盛んでね、船乗りたちの冒険譚はヴェルヌの想像力をかきたてたものさ。彼は子ども心に「海の英雄」になるって思ってたらしいよ。

ζリ*´点`)<ヴェルヌは11歳の時、いとこのカロリーヌにサンゴの首飾りをあげようとして、密かに水夫見習いとしてインド行きの帆船に乗り込んだんだ。けどバレて、「これからは夢の中でしか旅はしない」と言ったらしいよ。ま、この逸話が本当かどうかは疑わしいけどね。

ζリ*´点`)<成長したヴェルヌはパリの法律学校へ進み、多くの芸術家と交流した。特にアレクサンドル・デュマ父子(父は『モンテ・クリスト伯』や『三銃士』、子は『椿姫』で有名だね)と親しくなり、大デュマがヴェルヌの劇作家としての処女作をプロデュースして好評だったんだよ。

ζリ*´点`)<ヴェルヌはあとエドガー・アラン・ポーの影響も強く受けてるね。ポー唯一の長編小説『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語 』の続編として『氷のスフィンクス』を書いてるよ。

ζリ*´点`)<まぁミステリアスなポーの作品に、全部科学的な説明を加えちゃったあたりで好みが別れるけど、それがヴェルヌらしさともいえるんじゃないかな?

ζリ*´点`)<ちなみに『八十日間世界一周』の主人公、フォッグはアーサーの家の人だよね。 [言]ω[言]<ああ、あの時代は世界中いたるところに俺の植民地があったからな。それで世界一周ができたっていう時代背景もある。

ζリ*´点`)<あんまり有名じゃないけど、『ハテラス船長の冒険』っていう北極探検物語の主人公もアーサーの家の人だね。当時の北極点到達争いが背景にあるんだよ。 [言]ω[言]<あの時は俺ん家も必死だったんだよ…。

ζリ*´点`)<ネモ船長の話に戻るけど、彼は最初イヴァン家に反抗するポーランド人っていう設定だったんだけど、後にお前ん家に復讐を誓うインド人って事になったんだよね。 [言]ω[言];<そ、そこらへんで俺に話を振るな…

ζリ*´点`)<とまぁ、数々の科学冒険もので人気を博したヴェルヌだけど、後にアミアン市議会委員になってこれまた手腕を発揮してるね。多能な人だったんだよ。実の甥に襲撃されちゃって、災難なこともあったけど…。

ζリ*´点`)<ヴェルヌは編集者ジュール・エッツェルと組んで数々の傑作を生みだしたんだ。エッツェルのアドバイスが大きく作品を変えることもよくあったよ。さっき言ったネモ船長の生い立ちなんかもそうだね。

ζリ*´点`)<ヴェルヌは最初、大衆向けの作家としてあまり学界からは注目されなかったんだけど、最近はその先見性や文明批評の鋭さから再評価の動きが高まってるね。お兄さん嬉しいよ!

ζリ*´点`)<…とまぁ、こんな感じかな?まだまだ話したいことはいっぱいあるんだけど…。 [言]ω[言];<お前これ以上俺のアカウントをジャックする気かよ… ζリ*´点`)<ジャックはお手の物さー♪

ζリ*´点`)<お兄さんヴェルヌについて語れて満足!それじゃあそろそろお暇しようかな? [言]ω[言]<あ、ちょっと待てよ!別にお前のためじゃないけど、カフェオレの用意がたまたまあるから、この間の論争に決着つけようぜ!今度こそ英文学の方が優れてるってことを分からせてやる! 

[言]ω[言]<…という訳で、フランシスの馬鹿のヴェルヌ講義は以上だ。 ζリ*´点`)<付き合ってくれてありがとうね~♡

1月:ルイス・キャロル

1月:ルイス・キャロル

《子ども時代 その1》ルイス・キャロル(Lewis Carroll)の本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジスン(Charles Lutwidge Dodgson)、1832年1月27日にチェシャー州で牧師の息子として生まれた。姉が二人いたんだけど、長男だったから期待されてたな。

《子ども時代 その2》一家は1843年にノースヨークシャー州クロフトに移り住んだ。クロフトは当時活気のある街でな、幼いキャロルは自然に囲まれた大きな牧師館で遊んでたらしい。13歳ごろから家庭内回覧雑誌に詩と挿絵を寄せ、やがて小説や編集にも興味を持ち始めたんだ。

《学校生活とオックスフォード》キャロルはパブリック・スクールのラグビー校に入ったが、校風にはあまりなじめなかったらしい。1849年に卒業し、1年おいてオックスフォードのクライスト・チャーチ学寮に入学する。キャロルは生涯ここの数学教師として働くことになるんだ。

《クライスト・チャーチ学寮》クライスト・チャーチ学寮はハリー・ポッターの撮影場所としても知られているな。食堂に通じる扉の上には、「アリス」シリーズでアリスのモデルとなった少女の父親の写真(彼は学寮長だった)が飾られている。http://twitpic.com/88r70i

《ペンネーム》1856年、キャロルはエドマンド・イェイツの主催する雑誌『コミック・タイムズ』誌に投稿を始め、『トレイン』誌に「孤独」という詩を発表したとき初めてルイス・キャロルというペンネームを使った。

《ブレイクの影響》キャロルはウィリアム・ブレイクやロマン派詩人たちの自然観や子ども観、信仰に影響を受けている。子どもの中に「神性」を見、彼らを「天上からの使者」とみなしたんだな。

《写真 その1》1855年ごろから、キャロルは写真に凝り始める。もともと挿絵を描いていたから、視覚的な芸術にも興味があったんだろう。「アリス」のモデルとなったアリス・リデルや、他の少女たちの写真も多く残している。

《写真 その2》キャロルは多くの少女の写真を残しているが、その中にはヌード写真もある。…変な目でみるなよ、当時は子どものヌード写真を撮るのは珍しいことじゃなかったし、キャロルは少女の母親も同伴させてたんだからな。

《リデル三姉妹》キャロルは写真を通じて学寮長の娘であるリデル三姉妹と仲良くなる。姉妹の母親はおしゃれな人でな、次女のアリスは当時にしてはめずらしく髪を短くしていた。ブルネットだし、「アリス」の挿絵のイメージとはずいぶん違うな。

《「アリス」の始まり》1862年7月4日、キャロルはリデル姉妹や同僚のダックワースとともにボート遊びをし、キャロルはそこで即興の物語を語る。これが『不思議の国のアリス』の元となったんだ。『アリス』の冒頭にある詩にその時の印象が書かれているな。

《『地底のアリスの冒険』》ボート遊びの時に語られた物語をアリス・リデルが気に入り、本にして欲しいとキャロルに頼んだ。キャロルは2年後、全4章からなる自筆挿絵入りの『地底のアリスの冒険』を完成させ、アリスに送る。

《『アリス』出版》『地底のアリスの冒険』を読んだキングズリー(『水の子』の作者)やマクドナルド(『北風のうしろの国』の作者)、ダックワースの薦めで、キャロルは『アリス』の出版を決め、大幅な加筆修正をほどこす。それをマクミラン社が出版することになったんだ。

《挿絵》『不思議の国のアリス』の挿絵を担当したのは、当時『パンチ』誌で活躍し、人気挿絵画家であったジョン・テニエルだった。このテニエルの挿絵は『アリス』のイメージに決定的な役割を果たした。今でも『アリス』と言えばテニエルの挿絵が思い浮かぶだろ。

《『不思議の国のアリス』》今でも数多くの論文が書かれている『不思議の国のアリス』だが、作品全体が謎めいているだけに色んな解釈ができる。アイデンティティの確立と関係があると言われているし、他にも色んな説がある。まぁ、好きな風に読めばいいと俺は思うけどな。

《『鏡の国のアリス』》この作品では、全編のアリスの動きがチェスのゲーム展開に沿っていくという、キャロルらしい緻密な構成が展開されている。個人的に印象深いのは白の騎士のくだりだな。彼にはキャロル自身の姿が投影されていると言われている。

《その他の作品》キャロルは他にも『スナーク狩り』『シルヴィーとブルーノ』といった作品を残しているが、これらの作品は上級者向けかな…。児童文学かどうかという議論もなされているが、少なくともキャロルは『スナーク狩り』は子どもに受け入れられると思っていたらしい。

《その死》キャロルは1898年1月14日、ギルフォードの姉妹の家に滞在中、肺炎で亡くなった。彼はギルフォードのマウント・セメタリーに埋葬されている。

12月:チャールズ・ディケンズ

12月:チャールズ・ディケンズ


《子ども時代 その1》チャールズ・ディケンズは1812年2月7日、ポーツマスに海軍の会計吏の息子として生まれた。本をよく読み、特にデフォーやゴールドスミスを好んだ。ごっこ遊びや劇の真似事をしていた彼は、大人になってからも家族でアマチュア劇を上演している。

《子ども時代 その2》父親は愛想のいい人物だったが金銭感覚がなく、1824年に一家は破産し、父親がマーシャルシー債務者監獄に入れられる。12歳だったディケンズはひとり靴墨工場で働き、日曜には父親の面会に行った。この時のつらい体験が後の作品に大きな影響を与えている。

《子ども時代 その3》当時の労働者の生活はひどく、子どもであっても長時間労働や低賃金は当たり前だった。父親が監獄から解放され、ディケンズは学校に入ることを許されるんだが、母親はそれに反対し、工場で働かせ続けようとした。この事でディケンズは母親に反感を持つようになる。

《作家としての第一歩》1827年からディケンズは事務所で働きだし、速記を覚えて法廷の速記記者になった。暇があれば大英図書館で演劇について学んでたから、役者を志してたんだろう。速記記者として働きながら、彼はBozというペンネームで雑誌に写生文を発表するようになる。

《1836年》1836年はディケンズにとって実りある年だった。『ボズのスケッチ集』が出版され、結婚もし、後に10人の子どもをもうけた。この年に『ピクウィック・ペーパーズ』の掲載される雑誌の編集者となり、作家としての地歩を固め始める。

《原題 その1》『ボズのスケッチ集』'Sketches by Boz'(1836)、『ピクウィック・ペーパーズ』'Pickwick Papers'(1836-37)

《作家としての成功》あの時代にはよくあるように、ディケンズの作品も最初は月刊誌に掲載された。『オリバー・トウィスト』は1837年から39年に、『骨董屋』は40年から41年に連載された。この時から、ディケンズの文名は高まっていったんだ。

《原題 その2》『オリバー・トウィスト』'Oliver Twist'(1837-38)『骨董屋』'The Old Curiosity Shop'(1841)
《Christmas Books》『クリスマス・キャロル』(1843)は子ども向けに書かれ、後に毎年クリスマスに書かれた作品をまとめて「クリスマス・ブックス」として出版された。この中では『炉端のこおろぎ』(1846)も評価が高いな。

《原題 その2》『クリスマス・キャロル』'Christmas Carol'(1843) 『炉端のこおろぎ』'The Cricket on the Hearth' (1845) 「クリスマス・ブックス」'Christmas Books'

《旅行》妻の妹(ディケンズは彼女の方を好きだったらしいが)が亡くなった後、夫婦は国内とアルん家、マシューん家と旅行し、『アメリカ紀行』(1842)や『マーティン・チャズルウィット』(1843-44)を書く。

《原題 その3》『骨董屋』'The Old Curiosity Shop'(1841) 『アメリカ紀行』'American Notes'(1842)『マーティン・チャズルウィット』‘Martin Chuzzlewit’(1843-44)

《アマチュア劇》ディケンズは1849年、自伝的小説『デイヴィッド・コパフィールド』を出版した。51年から60年までTavistock Houseに住み、彼はここでアマチュア劇に精を出し、収入を慈善事業に使ってた。『白衣の女』『月長石』で知られるウィルキー・コリンズも参加してたな。

《50年代から60年代まで》この時までには、ディケンズの名はヨーロッパ中に知れ渡っていた。『二都物語』(1859)や『大いなる遺産』(1860-61)が書かれたのもこの時期だな。パリから帰る途中一行は列車事故に遭い、ディケンズは大けがを負うことはなかったが大変なショックを受ける。

《原題 その4》『デイヴィッド・コパフィールド』’David Copperfield’(1849-50) 『二都物語』'A Tale of Two Cities'(1859) 『大いなる遺産』'Great Expectations'(1860-61)

《その死》ディケンズは1870年6月9日、脳卒中により亡くなった。彼の遺体はウェストミンスター寺院の詩人の敷地に埋葬され、以下の墓碑銘が刻まれた。「彼は貧しい者、苦しむ者、虐げられた者の共感者であった。彼の死によって、世界から、一人の偉大なイギリス人作家が失われた」。

文英クリスマスイベント

(部屋の時計が0時を打つ。アーサーは読んでいた本を置き、大きく伸びをした)

文英「ああ…もうこんな時間か。そういや今日はクリスマスか。この間蒸したプディング、おいしくなってるかな…」(足元に3匹の猫、シャーロット、エミリー、アンが寄ってきた。アーサーは微笑みながら3匹を撫でると、そろそろ寝ようかと椅子から立ち上がった)

シャーロット「なーお…」文英「はは、まだ撫でて欲しいのか?朝になったらクリスマス用のごちそうを用意してやるから、それまで…ん?」(ふと背後に気配を感じ、アーサーは振り向いた。その目が大きく見開かれる。)

文英「…ウィル…?」

シェイクスピア(以下沙翁)「やあ、アーサー。久しぶり。ざっと400年ぶりかな?私が故郷に帰ってから…。」

文英「え…だって…ウィル…俺、夢でも見てるのか…?本当に、お前なのか…?」沙翁「私さ。お前と馬鹿やっていた頃と変わらないだろう?お前の方は…ふむ、ずいぶん成長したな。あと千年も経てば私と同じくらいになるだろうね。」文英「…はは…相変わらず…口が軽いじゃねぇか。安心したぜ…。」

沙翁「さて。私は先遣りの役を仰せつかっているのでね。いつまでも君を独り占めしていると怒られるから、これから先は御嬢さん方に譲ろうとしよう。」文英「お、御嬢さん方?」沙翁(にやりとして)「…分からないかね?」

(シェイクスピアが指し示すその先には、19世紀の服装を身にまとった小柄な女性が立っていた。アーサーの忘れられない顔だった。)

シャーロット・ブロンテ「御機嫌よう、アーサー。」

(シャーロットはそっとアーサーの手を取ると、にこりと微笑んだ。)シャーロット(以下シャ)「こうしてまたお会いできるなんて、夢のよう。貴方は本当に、変わらないのね。ずっとずっと、若いままなのね。」

文英「…お前が死んだときも、お前は若かった。不条理なくらい若かった。お前の死を知ったとき俺が泣いたのを、知らないだろ、シャーロット。」シャ「本当に?ふふ、嬉しいことだわ。貴方は何万人もの人たちの死を見てきたから、動じないものだと思ってた。」

文英「慣れないよ。こればかりはずっと。」

シャ(アーサーの手をぎゅっと握り)「アーサー。私…いえ、私たちね、貴方に見せたいものがあるの。貴方がここに籠って本を読み始めてから、ずっとずっと見せたかったもの。」

(いつの間にか二人はアーサーの見覚えのない部屋に立っていた。質素な部屋で、一人の男が机に向かっている後姿が見える。蝋燭の明かりが頼りない。)

男「ああ、分からん!ここはどうやって書いたらいいんだろう…こうすれば…いや、ちょっと不自然かな…」
シャ「あれは過去の情景。私は過去のクリスマスの幽霊なの。あの男の人は、ああやって記者をする傍ら作品を書いているのだけれど、後に作家として大成するのよ。彼も、もうとっくに死んでしまったのだけれど…。」文英

「…ああ、分かるよ。」

男「そうか、分かった!こう表現すればいいんだ!」

シャ(微笑んで)「インスピレーションね。私たちはそれを待って、日々何枚もの紙を無駄にするんだわ。でもその努力は徒労じゃないのよ。…さぁ、彼女が待ってるわ。アーサー」(と、アーサーの手を現われた別の手に渡す)

文英「エミリー!」エミリー(以下エ)「あら、私の事も覚えていてくれたのね。嬉しいわ。さぁ、私はお喋りなんてしないわ。行きましょう。」

(気が付くと、二人は劇場の舞台の上に立っていた。舞台装置が出来上がり、後は公演を待つばかりとなっているが、今は真夜中で、舞台にはアーサー達の他は台本を持った男女一組しかいない。)

男「違う違う、そうじゃないよ。ウェンディをいくつだと思ってるんだ?もっと軽やかに喋るんだよ。」女「分かってるわよ。もう、少女の役って飛び跳ねるだけじゃ務まらないのね…」

エ「あれは現在。私は現在のクリスマスの幽霊なのよ。あの二人はちょうど、クリスマス公演に向けて特訓中ね。私はあの劇を知らないけど、きっと子どもたちにたくさんの夢を与える劇なのね。違って?」文英「ああ、そうだよ。とても…いい劇だ。」

エ「役者たちは観客の前でどんなに無造作に言葉を喋るように見えても、その裏ではたくさんの努力を重ねているのね。私は劇をやったことはないけど、分かるわ。…アーサー。ここまでくれば、次に誰が待っているか分かるでしょう?」

(エミリーはアーサーの手を、続いて現われた手にゆだねた。)

アン・ブロンテ「私を忘れただなんて言わせないわよ、アーサー。ねぇ、次はどこへ行くと思う?」(悪戯っぽく笑うアンの視線の先には、クリスマスの飾りつけがなされた子ども部屋があった。ベッドに子どもが入っており、母親が脇で絵本を読んでいる。)

子ども「ねぇ、もう一回!もう一回読んで!」母親「貴方はこのお話が本当に好きね。でもそろそろ寝ないと、サンタさんが来てしまうわよ。ほら…お休みなさい。」

アン「私は未来のクリスマスの幽霊よ。あの子どもが将来、どんな大人になるのか、私には分からないわ。だって未来の話ですもの。でも、いつか大人になったあの子の心の中には、幼い頃ああやって読んでもらった物語がずっと生き続けていることでしょうね。」

文英「そう願うよ。」アン「あら、そうに決まってるわ!例えあの子が物語のことを忘れてしまって、つまらない大人になったとしても、ふとした時にあの本と幸せな思い出がよみがえるの。物語というのはそういうものよ。だから作家は物語を書くのよ。」

(子どもは明かりの消された部屋で、窓から見える月をじっと見ている。「あのお月様に、いつか届くかな」と子どもはつぶやき、やがて眠りにおちた。)

アン「サンタクロースがやってくる前に、私たちは退散しなきゃね。アーサー、名残惜しいけど…彼に貴方を返すわ。」

(アーサーが瞬きをした隙に、彼は元の部屋に戻っていた。シェイクスピアがアーサーの読みかけていた『お気に召すまま』を手に取り、ページをめくっている。)

沙翁「おやおや!私の書いた芝居が、今までずっと残ってるだなんてね。嘘みたいな話だ。お前もそう思うだろう?」文英「思わないよ。お前の芝居はずっと残るって信じてた」沙翁「それはどうも!まぁ、君にとっては、400年なんて一瞬だったろうからな。」

文英「そんなことない。確かに人々は俺みたいな国に比べたら恐ろしい早さで生まれて、生きて、死んでいくけど、俺はどの生も、どの死も覚えてる。どんなつらい手紙も取っておいてる。どうしても、忘れられないし、忘れちゃいけないことだと思ってるから。」

沙翁「…アーサー。お前が私の国でよかった。私の故郷でよかった。」文英「俺の方こそ。お前が俺の元に生まれてきてくれてよかった。お前は…俺の誇りだよ。」

(シェイクスピアの姿が消えかかっていることに気づき、アーサーははっとした)文英「待ってくれ!言いたいことがたくさんあるんだ!あの3人にも…!俺はお前たちの言葉も、お前たちが残してくれた作品も、全部、全部伝えていくよ!俺だけじゃない、みんなで!この国のみんなで…」


(3匹の猫に垂らした手を舐められて、アーサーは目を覚ました。机に突っ伏して寝ていたらしい。時計を見てみると、0時をだいぶ回った頃だった。)文英「夢…かな…?」

(シャーロットが机の上に飛び乗り、さっきまでアーサーの読んでいた『お気に召すまま』に右前脚を乗せた。アーサーはパラパラとページをめくり、最後のページに見慣れた筆跡を見つけると、ふと微笑んだ。)

文英「あいつらしいよ。」

“All the world’s a stage, and all the men and women merely players”(世界は舞台、男も女もみな役者)

~fin~
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